最近の作業用BGMは、MelodyHDTV(Middle East)から選んでいる「ひでっとる」です。よろしくお願いします。
今回は、ノコギリノコドウの6回目として、作品の中で重要な意味を持つ職人さん達のポートレイトの撮影をどのように行っているかをお伝えしようと思います。
僕の本業は、学校写真のカメラマンで、日常的に人物の撮影に携わっています。仕事では、いかにして良い笑顔を撮れるかに力を注いでいます。
同じ人物の撮影ですが、作品の撮影については、職場である工場の中で、仕事中の貴重なお時間を頂戴して撮影させていただくので、どうすれば緊張されることなく印象的にその姿を撮影できるか、を瞬間芸で判断します。実は時間勝負なのです。だから、
余分な時間が掛からないよう、最小の準備で臨みます。
それと、
事前の準備が大事です。
すぐに撮れる状態で職場に入り、撮影場所、アングル、露出を瞬時に決めて、職人さんを誘導し、撮影。基本は1カットを数枚。職人さんの時間的に余裕があれば、もう1カット数枚で終了します。工場内の滞在を15分以内で完結するのが一つの目標、目安です。
この方法で撮影させていただいたのが、【ノコギリノコドウ】のポートレイトです。
屋内ポートレイトの撮影機材について
以下の項目の機材があれば、撮影できます。今のカメラは良質な画像が撮れるので、高価な機材を揃える必要はないです。最低限の条件を列記します。あとはひたすらテスト撮影して、どんどん機材に慣れていきましょう。
カメラとレンズ
まずは、カメラの必要条件とレンズの種類です。
- シンクロ接点か、ホットシューのあるカメラ
- 露出設定でマニュアルモードのあるカメラ
- できれば、RAWで撮影データを保存できるカメラ
- レンズは標準ズームレンズ(純正でなくてもよいです)
室内ではストロボを使った方が印象的な人物撮影が出来ます。なので、カメラに、外付けストロボを取り付ける為のホットシューか、シンクロ接点が必要です。
マニュアルは、ISO感度と絞り、シャッタースピードの各項目を自分で決定できる設定です。
RAWデータがあると、色温度や露出の補正に役立ちます。保険としても是非RAWで保存してください。
レンズは明るいレンズでなくて良いです。標準ズームは、狭い場所で限りある撮影条件の場合、単焦点レンズを交換する手間を省くことと、標準ズームの範囲の画角がポートレイトには、使いやすいためです。
カメラのイメージセンサーの画像サイズがどれくらいが良いとか、気にしなくて良いです。ミラーレス、APS-C、フルサイズどれもきれいに撮れます。
今のカメラはよく写ります。僕は9年前に発売開始したカメラとレンズで撮影していますが、満足する結果が得られます。1200㎜x800㎜サイズのプリントでも画像が破綻しません。
条件がバッチリあった撮影だと、800万画素程度の設定でも十分この大きさの写真は経験的に作れます。要するに
ハイスペックの道具よりも、慣れていく過程の方が何倍も大事です。
クリップオンストロボ
僕は、カメラメーカーの純正のクリップオンストロボを使っていますが、メーカー用に出された別会社のストロボでも良いです。
後述するラジオスレーブ機能を持つストロボなら、その方が都合が良いです。クリップオンストロボはカメラのホットシューにセットして使いません。カメラと離れた位置からストロボを発光させます。
TTL機能を使わずに、基本的に手動で使います。
室内に限って使うなら、出力の光量が大きいものは必要ないですが、別の用途で、屋外の人物撮影で使う場合は、出力の大きなものを持っていると楽です。
そこは、大は小を兼ねます。
ライトスタンドとストロボのブラケットホルダー
ここからの4点は、カメラと離れた場所にストロボをセットするための道具です。
まずは、ライトスタンドと、その上にストロボを固定するためのホルダーが必要です。
スタンドの上に丸っこいフレームがブラケットホルダーです。そのホルダーには、アンブレラ(傘)も取り付けます。
購入する時の注意点は、ライトスタンドとブラケットホルダーのコネクター形状を必ず確認することです。間違えると、ダボと呼ばれるコネクターのオスメス変換器具を別に用意することになります。
日本製品の基本的な仕様は、スタンド側がメスで、取り付けるホルダーやストロボ側がオスですが、海外製品はその逆です。
僕は元々海外製のモノブロックストロボを使っていました。それに使用するスタンドのコネクターがオスでした。それに合わせるために、ブラケットホルダーはメスのタイプを購入しました。
透過型のアンブレラ
普通の雨傘が白いタイプです。ストロボと被写体の間に取り付け、光を柔らかく拡散します。
サイズは、大きい必要はないです。僕は、開いた直径が84cmの大きさを好んで使います。一般的に33インチと言われるサイズです。大きくないので、人物撮影で全身に光を回すには厳しいです。
工場での撮影では、足元に向かって暗くなるのを自然と思える場面なので、むしろ上半身をメインと考えれば、適度に周辺光量が落ちることは、指向性が高くなり、ありだと思います。
これより大きいと、最適な設置場所に置けない可能性が大きくなります。工場内はかなり狭いところです。
アンブレラは反射式のものもありますが、光の回り方が、明暗のメリハリが出る印象になります。
透過型だと暗い影の部分にも少し光が当たるので、後工程でコントラストのコントロールがし易くなります。
ラジオスレーブ
ストロボを発光するシグナルを、カメラからストロボへ送受信するための道具です。以前はケーブルをつないでいたのですが、今は電波を使うラジオスレーブが良く使われます。
送信機と受信機をセットで使い、送信機はカメラの本体のホットシューに取り付け、受信機をストロボに取り付けます。
ケーブルに引っかかる心配がなくなり、自由度が非常に高いので、是非用意することをお勧めします。
注意点は、海外製品で技適(技術基準適合証明)を付けていない製品の使用についてです。
僕は、撮影に関して余計な心配をするのを避けたいので、技適を付けた製品を使うようにしています。
探せば、比較的安い技適を付けた製品もあります。ストロボが光りさえすればよいので、シンプルな機能の製品で十分です。
ポートレイトの撮影方法・注意点まとめ
機材的には、カメラと、スタンドに付けたストロボを1台で撮影します。
場所の決定
最初に撮影場所を決めます。
ポートレイトはメインとなる人物と、背景となる場所との関係性に配慮が必要です。
スタジオで撮る人物だけの無背景の写真との違いです。
機材もシンプルなので、背景の光の状態は地明かりが整っている環境を選びます。
カメラのアングルは、撮影者目線では高過ぎます。
高いカメラ目線からの画像は、撮影者の意図に関わらず、被写体に対する高圧的な態度と読み取られてしまうことがあります。
トレンド的にも、足を長く見せたい撮影方法は、被写体の腰高よりも低いアングルからの撮影がされます。
僕の作品も、ご年配の方よりもさらに低い目線から、できるだけ平行に向けて撮影しております。
もちろん敬意を持っていますので、自然にですが。
露出の決定
撮影場所の地明かりの露出を確認します。被写体のいない状況で、撮影してみて、適正露出を確認します。
正式には、露出計を用いて算出するべきかもしれませんが、シンプルかつスピーディーに作業を進めるために、試し撮りの結果で判断します。
適正露出は、別の記事で詳細を説明しますが、概要だけだと、
- カメラのバックモニターの見た目を信用しない
- ヒストグラムの見方を覚える
- 繰り返し経験を積んで、瞬時に判断できるようにする
です。
ここで、ISO感度、絞り値、シャッタースピードを決定します。
室内なので、ISO感度は、800~1600が中心かと思います。もっと暗い場所なら、感度は高くなります。
絞り値は使用するレンズの開放絞りより一絞り程絞った値を使います。ピントの合う奥行きを確保したい場合は、絞りの値を大きくします。
シャッタースピードは、手ブレの可能性があれば、1/60以上短い時間設定で撮影します。でも、ストロボを使用しますので、高速シャッターに対応できないストロボには、カメラ側の多くは、1/125が最も短い時間設定です。なので、基本的には、
シャッタースピードは1/60~1/125くらいで設定します。
以上がざっくりの条件です。撮影場所の状況で調整は必要です。
ライティングのセッティング
被写体の人物がカメラへ向ける目線に対し、斜め前方45度から60度方向へ、1~2m位離した場所にストロボをセットします。
カメラとストロボの角度が大きければ大きいほど、人物の立体感が増します。ですが、影が増えすぎると、余計な演出感が増しますので、そこら辺のバランスを見て、角度を決めてください。
背景の露出に合わせて、ストロボの光量をセットします。ここでも1~2枚テスト撮影して、光量のバランスを確認します。
この順番さえ間違わなければ、カメラの露出設定、ストロボの光量もマニュアルモードで設定したほうが早いです。
ちょっと余裕があれば、ストロボの光源の向きは、人物に真っすぐ向けるのではなく、少し芯をずらして当てる方が良好な結果が得られます。僕は少し人物の手前に光軸を向けます。
撮らせてもらう方とのコミュニケーションについて
さあ、ついに被写体にご登場いただき、撮影となります。
不思議なことですが、写真って撮影する側と写される側の関係性が写り込んでしまいます。
例えば、僕の作品に関しては、僕との関係性は不要で、撮影される職人さん達の人となりであったり、仕事に対する心構え、姿勢だったりが写って欲しいわけです。
単に、良好な関係を作るために、打ち解ける話をすることは、得策ではないのです。
あくまでも、長年働かれてきた職場で撮るにふさわしいお姿になるような雰囲気で声をお掛けします。
意識的に撮影者側のエゴ(自我)を無くすことに集中します。
それが僕のスタイルです。個性を主張するタイプの写真家とは真逆ですね。
最後に
僕のポートレイト作品の舞台は、ノコギリ屋根の工場の中です。ご覧の様に、北側に向いた採光窓からのドラマティックな光が内部に降り注ぎ、舞台装置として申し分ないことは、計算ずくでした。あとは、
主役の職人さん達を浮かび上がらせる光を適切に演出することに集中すればよい。
そこまで計算しきれてはじめて、最小限の労力、時間で最大限の作品を撮影できるのです。
現場では、無駄な動きを省いて最小限の作業に心掛けましょう。
今日も一日安全作業で頑張ろう!ご安全に。