作品が完成したって決めるのはいつ?ノコギリノコドウー2

写真家を名乗る「ひでっとる」です。よろしくおねがいします。

皆さんは、作品の完成をどうやって決めてますか?僕は、未完のままで筆を置きかけた経験があります。この記事を読んでいただくと、

  • もうひと踏ん張りで、作品の質が劇的に向上する

ことが理解できます。

ノコギリノコドウー1では一宮市にたくさんあるノコギリ屋根の工場を撮影し終えたところまでを書きました。その時点で、建築物の作品としては、十分な撮影データを確保しました。約580件。作品としては、洗濯物などのプライバシー要素が写ってしまっていたり、ポスター看板など作品の意図しないものが写りこんだものを省いて、200枚ほどを使った作品としての体裁を整えることができました。

それを持って、当時流行っていたポートフォリオレビューに参加してみましたが、珍しい形の建物だったので一定の評価をいただけました。最初の準備から足掛け3年半程かけていましたから、この段階で僕自身は終わった感じがあった。正確には終わらせたかったかもしれません。でも、2700件の工場を回って工場の外観を撮っていると、

中から稼働している音が聞こえるやん。

そうなのです。産業の規模が大きく縮小したとはいえ、中で布を織っている織機がガッチャン、ガッチャンと動いている工場がまだあることを知っているのです。

中の機械ってどんなものなんだろう?

とか

働いている職人さんはどんな人達なのかなぁ?

と興味がどんどん膨らんでいっているのを気付いているのです。でも終わらせたい気持ち半分でした。結局、僕はここでもうひと踏ん張りしたのです。同じモチーフを次の段階で撮影し始めます。重い腰を上げることが出来たのは、興味が勝った部分と、もう一つ、気分的な重荷を軽減する強力な武器を手にしていたのが大きかったのです。

中の職人さんにお声をかける名刺を手に入れていました。

建物を撮った200点程度の作品を職人さんに見てもらい、会話をしながら、是非工場内の様子も見せてほしいと話しかけることが出来ました。職人さんにも、僕の本気を理解いただくことが出来ました。まさに、

写真はコミュニケーションツールそのものです。

遠回りな方法ですが、自分が納得する方法ってこんな事の積み重ねなのかなぁと、不器用な自分をなぐさめて。次のステップ、もう一回全部回って、中で稼働している工場を探して、突撃で中を見せてもらって、写真撮影の許可を得ることをやろう!と決めました。最終的には2700件の工場の内、170件の稼働を確認でき、半数の工場は中を見学させていただきました。撮影を許可頂いた中で、職人さんのポートレイトの撮影を許可頂けたのが十数件でした。それを作品に追加して、最終的な完成としました。

一般の方に飛び込みで撮影を依頼した場合、声をかけることが出来た人の10分の1くらいの方が顔出し撮影してもらえれば御の字、という自分の中の基準が出来ました。これも都会に行けば、もっと確立が厳しくなると予想しますが。

もっと丁寧な活動を継続して、撮影させていただける状況を増やすことが出来ますし、これからずーっと継続して追い続けることのできるモチーフだと考えることもできましたが、10件の職人さんのポートレイトを撮れたあたりから、どうしても、この作品は早く発表しなくては、ということを強く意識し始めました。工場をまだ継続されている方々は、ほとんどが後継者のいない高齢者の方で、近い将来、ほとんどの工場が廃業される状態でした。

僕がお会いできた唯一の後継者のいらっしゃる、岩田さんご家族の工場にて

尾州の毛織物といえば、高い品質で世界的に知られている存在で、僕の撮影対象である小さな街の工場が扱う古い機織りの機械(ションヘル織機)で織られた生地は、手織りに似た風合いを持っていて、特別の評価を受けています。

運用には忍耐力の必要な作業が多く、なかなか若い人がやりたがらないと聞きます。ションヘル織機は製造終了して何十年も経過したものなので、現存している機械を維持するのもままならない。こりやぁいかん。

この産業形態を絶やしてはいけない。

と、強く思うところがあって、大袈裟だけど、早く世に問わないといけないと思って、ポートレイト作品10枚などを追加した一連の作品で、急ぎ個展の準備に取り掛かりました。

個展の準備、開催については次の記事で。

最後に、

  • 忍耐強く少し粘って被写体を追うと、作品の質が劇的に向上し、自分の視野が広がりました。完成とする判断には、必然的な理由があります。

今日も一日安全作業で頑張ろう!ご安全に。

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