週末の朝、息子を起こしに部屋へ行くと、起こし方がイラっとすると言われる「ひでっとる」です。よろしくお願いします。
写真作品の個展って、「いつかはやってみたい」と思うけど、なかなか実現できないですよね。
僕は、2017年に個展をしました。完成した作品が、個展で発表してちょうだいと、僕に訴えかけてきたので、決断しました。個展はそれなりに費用と時間が掛かりました。大変でしたけど、写真に関わる僕の環境が一変しました。
家族や親族が僕の行動を認めてくれるようになりました。
そりゃあそうでしょう。仕事から帰って、ヘロヘロなのに、部屋にこもって何をやってるか訳が分からないことを来る日も来る日もゴニョゴニョ飽きずにやってましたから。個展の作品を見て、やってたことの全体像を見て納得できた様でした。
多くの方と知り合うことができて、ご紹介の連鎖が今も続いています。
広い意味で、写真はコミュニケーションツールです。5年前に始まった連鎖は、今でも広がり続けています。色々な活動のきっかけをいただいています。
写真を撮る方なら是非個展を開催することを強くお勧めします。
やるからには、しっかり準備して、成果を挙げてほしいと思うので、僕の経験した注意点を記事にします。
今回は、ノコギリノコドウの4回目、作品の撮影を終了し、作品が完成する頃、展覧会を開催しよう!と考えたところからの続きです。
撮影を終了する頃は、すでに多くの機織り職人さん方にお会いしていました。さらに、実際に稼働中の工場内部の様子を見学できました。職人さん達からは、共に生きた織機への想い、仕事への想いを聞くことができました。僕はこの作品が職人さん達の代弁者となり、作品自身と僕の言葉で想いを伝えたいと強く思ったのであります。
その伝えたいメッセージとは、職人達の高齢化と後継者がいない問題でした。ポートレイト作品が10枚出来た段階で、作品が完成したと判断して、個展開催に向けて全精力を傾けました。
僕の仕事は、幼稚園、小学校、中学校、高校の撮影に特化した写真店の勤務ですので、実は夏休みの期間はある程度自由に休暇をいただける環境になっています。なので、個展開催は迷わず8月にしました。なぜなら、
個展会場は全日程立ち会うこと
を必須条件にしたかったからです。やるからには、多くの人に伝えたい気持ちが強かったし、この段階ですでに
言葉で写真作品を補完(補い説明する事)することの重要性
を意識していました。
個展会場選び
個展を開催しよう!と準備を始めたのが、確か3月だったと記憶します。開催を8月と考えていたので、既に半年を切っていました。
まずは、会場を確保するのが難しい状況でした。むしろ遅かったです。
会場選びを成功するには、1年以上前には、準備を始める必要があります。
僕の場合に限っては、どうしても地元からの発信をしたかったので、1年前は必要なかったですが、半年前だったらもっと希望に合う会場を選べたと思います。調べてみると、有名な会場、大きな会場では、1年前には抽選や、作品の審査が必要なところが多いことに気づきました。何かのプロジェクトを進行中の方は、希望している会場は1年以上前に事前に情報を押さえてください。
僕の個展会場でも、やりたかった規模の会場は希望日時を既に押さえられていて、日程と部屋のサイズを調整する必要がありました。
開催日程選び
一般的な個展の会期は最終日を日曜日とした5日間くらいですね。水木金土日。僕は、全力で来場者さんとコミュニケーションを取ろうと考えていました。会場の使用できる時間が、9時から21時までと長かったのもあり、
金土日の三日間の開催にしました。
この3日間は、朝から晩まで終日会場に立ち、来場いただいたほとんどの方にお声をかけ、伝えたいことを言葉にすることが出来ました。多分5日間は、体力的に厳しかったでしょうし、水曜日、木曜日に来れる方は、金曜日も来ていただけると、勝手に解釈して、集中して取り組むことにしました。理想はもう1日長く4日間でも良かったのですが、会場を押さえることが出来なかったのです。結果的には、3日間だったので、全力で応対できたと思います。
会場のルールによりますが、搬入設営の日時も確認したほうが良いです。僕の会場では、前日の設営時間も部屋を押さえる必要がありました。その上、僕の作品は大量の写真だったので、設営の前準備の部屋も別で確保しました。おろそかになりがちですが、準備の段取りはしっかりと確認して下さい。
案内状(DM)の製作
展覧会告知の強い味方、DM(ダイレクトメール)を作りました。これは、知り合いに直接郵便として投函したり、DMの置いていただけるショップのコーナーなどに置かせていただいて、告知するための道具です。積極的に回って、いろんな場所に置かせていただきましょう。
今は、ネットで印刷をお願いできるサイトが多いので、どちらも良心的な価格から用意できます。ハガキの形状で表裏をデータで作って、入稿すれば、一週間くらいで届きます。会場と日時が決定したら、元原稿を作って、入稿しましょう。
たくさんの枚数を注文すればするほど1枚単価が安いので、多めに注文しがちですが、1000枚あればとりあえずは十分です。
僕も初めての経験だったので、今見返すと、直したほうがよかったなぁ、と思う箇所は多々あります。けどサンプルとして見てもらいます。
今見ると、情報が密すぎますね。まだ、読む人のことを考えていない部分が目立ちます。裏面のイメージですが、全体をノコギリのカタチに寄せたい一心で、何を見せたいかが分からなくなっていますね。まあ、なんじゃこりゃ?と思ってもらうインパクトはあったようです。
問題は宛名書き側です。文字が多すぎて、伝わらないです。文字の大きさは配慮して、小さすぎないギリギリを見切れていると思ってましたが、やはり文字が多すぎます。
裏面の代案イメージです。
これは、一宮にある妻の実家で、半世紀以上使われ、眠っていたノコギリを接写した画像を使いました。完全にさびたノコギリが、古いノコギリ屋根の工場のイメージと重ねています。これだと、どんな写真展なのか想像しづらいので、不採用としました。
告知の方法(DM以外)
告知の方法は他にもあります。
SNS、ウェブサイト等のネットを利用した告知
ネットを利用した告知は強力な武器です。拡散力を利用して、展覧会の入場者数を爆上げしたいところです。わかっちゃいるけど、使いこなすには、相応のスキルが必要です。努力が必要な世代には、つらい作業です。でも、避けて通れないことも理解しているので、出来るところから、このブログを書いています。
個展の開催当時は、ホームページを作ったばっかりで、誰もホームページを見たから来場したなんて人がいませんでした。
何も咲かない冬の日は、下へ下へと根を伸ばせ
です。
写真展ガイドのあるサイトや書籍
写真展ガイドのあるサイトや雑誌、月刊誌等に紹介記事の掲載を積極的にお願いしましょう。僕の個展の頃はまだ老舗写真雑誌が続いていたので、口絵ページに作品の紹介をしていただくように依頼をして、4ページの掲載をしていただきました。この時も、半年前位に依頼があればもう少しページを割り当てられたかもしれない、と言われました。
何をするにしても、早めの準備は大切です。
各テレビ局、新聞社、地元ケーブルテレビなどに告知
各テレビ局や、新聞社、地元のケーブルテレビなどには、直接レジュメ(展覧会の内容のわかる説明資料)を作成したものを送付しました。まずは問い合わせ先の電話番号を調べ、担当部署を聞き、資料を送り、返事を待ちます。結果としては、地元のケーブルテレビさんは個展初日に来場いただき、取材をしていただきました。新聞社さんやテレビ局も以降の活動を通して告知にご協力いただいています。
プレスリリース
個展準備中には知らずに、会期中に来場者さんから教わったのですが、プレスリリースというものがあって、地方には、市役所などに置かれている記者クラブに投げ込みと言われる告知受付方法があるとのことです。僕は各メディアさんに直接個別で行った告知を、一括して見てもらえる仕組みの様です。自治体によってそれぞれ違った仕組みの様です。確認されてはいかがでしょうか。
今後発表をしたいときは是非利用したいと思います。
プリントの製作と展示方法の検討
作品のサイズと展示の仕方
理想は、個展会場が決まり、作品の配置を考えながら、作品寸法を検討します。
作品は大きさでその印象が変わります。大きければ大きい程、インパクトが生まれ、会場全体でも押しが効きます。小さい作品が並ぶと、のぞき込むような見方になり、ある意味注意喚起を誘うかもしれません。全体の展示の流れで、どのように見てもらいたいか、それぞれの作品でイメージして、決定します。
参考までに、僕の個展のレイアウトを示します。
ポートレイトの作品と工場の写真108枚セットが対等なバランスになるように考え、ポートレイトは1200mmx800mmで、108枚のセットの一枚は、420mmx280mmとしました。どちらも、会場にインパクトを与えたかったので、出来るだけ大きなもので構想を練りました。
僕の好みですが、画像を見やすくしたいので、半光沢紙を選択しました。光沢紙によって写真に照明が照り返されるのが我慢ならないのです。黒の締まりを犠牲にしてでも、半光沢を選びます。
ポートレイトのサイズを大きく設定したので、名古屋のセントラル画材様に外注でプリントとパネル張りと簡易フレームを付けてもらいました。パネルの支持体はスチレンボードです。
会場が壁にビスを打ち込むのが禁止されており、吊り金具のみの展示が条件でした。なので、ポートレイトのプリントは簡易フレームに付属の吊り金具用のフックを使いました。
問題は、108枚の連作をどう展示するかでした。
皆さんなら、この条件で、どのような方法で展示しますか?
- 壁に穴を開けてはいけない。吊り金具は借りられます。
- 写真を108枚を横18枚を6段で展示したい
- 写真自体の平面性を重視し、写真の支持体をアルミ複合板を使う
近所のホームセンターで三六(3尺6尺、910mmx1820mm)のアルミ複合版を発見。切り出して写真の支持体として購入。裏面を細工すれば、うまいこと展示できるのではと考えました。
アルミ複合板に金属のフレームを左右縦方向に強力な両面テープで接着し、そこに吊り金具を仕込めるようにナット付き洋灯を付け、縦に数珠つなぎにぶら下げました。
2つの致命的なミスを犯していることを、設営の日と、個展の2日目朝に気づきます。
これでいけるとテストを繰り返して準備して、設営してみると、細かい位置調整がめちゃくちゃ難しく、どうしてもきっちり並べません。壁から浮いているので、真っすぐ吊り下げられず、左右上下に画像面が少しずつ傾いていました。
そして、2日目の朝、会場に行くと、何点か作品が落下していました。吊り金具は問題なかったのですが、金属フレームとアルミ複合板の間の強力両面テープがはがれていました。教訓です。
展示には、両面テープは単独で使用しない。必ず接着剤を併用する事
どんなに強力でも、両面テープは乾燥に弱いので、長時間展示には持ちません。この作品はその後、立て続けに展示することになるのですが、速攻で裏面の細工を変更し、木製のフレームを接着剤と両面テープを併用して取付け、それ以降は全く剝がれなく使えるようになりました。
ちなみに接着剤は、変成シリコン接着剤でバッチリ決まります。
その他、会場で必要なもの
- ステートメント(作品の紹介文と作者のプロフィール)
- これまでの活動を紹介する資料
- DM
- 芳名帳の代わりの投函箱(必須アイテム)
- 会場の場所を知らせるための案内ポスターなど(適宜)
会場入口もしくは出口に机を設置し、必要なものを置いておきます。芳名帳は個人情報の機密保持の観点から、投函箱での扱いが無難な気がします。写真にある手作りの投函箱は当時小学校4年だった息子が作ってくれました。
来場者様との接点は、この投函箱です。
必ず設置し、出来るだけ記入いただくように声をかけてください。反対に、自分自身が展覧会に出向いた場合は、積極的に芳名帳への記帳をされてはいかがでしょうか。
プリントの製作
写真作品を展示する作法として、画像処理は必須です。目標到達点は、画像処理をしていることを誰も気づかずに見てもらえることです。
画像が”自然に”見えるようにするためには、やり過ぎちゃえる技術と時間、それをやり過ぎないセンスが必要です。
フォトショップという写真加工ソフトの基本的な使い方は別の記事で説明します。
写真がまだデジタルに移行する前の、フィルムで撮っていた時代、モノクロプリントでは、焼き込みや覆い焼きと呼ぶ技法を駆使して画像加工は常に行われていました。それと同じ流れです。写真はそう言うものだと教わった世代ですから違和感なく行います。
最近のスマホアプリでの過度な加工技術はすごいと思うけど、やり過ぎないセンスがねーなー、と思う。
基本的な流れだけ列記します。
- レンズの歪みを補正
- 露出の修正(部分的な濃淡の調整も含む)
- 色調の補正
- 最適サイズにサイズ変更
- シャープネスをかける
画像処理の方法は人それぞれのやり方があります。僕のやり方は、書籍や人からのアドバイスを繰り返してやってみた我流です。もっと効率の良い、正解な方法があるかもしれませんが、始められる方には出来るだけわかりやすく解説したいと思います。
上で少しプリントについても触れていましたが、大きなプリント以外は、自宅にあるエプソンの顔料インクを使うインクジェットプリンターで出力しました。トータル150枚ほどの作品を展示する予定でしたので、出来るだけ費用を抑えた方法を検討しました。その結果、材料となる用紙などを吟味することで、プリントのクオリティーを維持した、最も廉価に出来る方法が自宅でのプリントでした。
展示するプリントを作るのがかなり久しぶりだったので、テストプリントも相当必要だと考えて、手軽に作業を進めるためにも、自宅プリントにした理由でした。
以上で展覧会の準備の概要を説明しました。想像以上に時間と労力が必要なことが理解できると思います。なので、繰り返しになりますが、
展覧会の開催日は一年以上前から決めて計画的に準備しましょう。
今日も一日安全作業で頑張ろう!ご安全に。